書店で見たときに、ドラクエ調の表紙とタイトルに惹かれて思わず買いました。
それぞれの町での出来事が善悪で簡単に分けられないことばかりで、色々と考えさせられる作品でした。
あらすじ
「魔王討伐の勇者一行が最初に立ち寄る町では、なぜ≪銅の剣≫までしか売らないのか?」
もっといい武器も防具もあるじゃないか。
なんで最初からそれを売らないんだよ……。
優秀な商人見習いとして、そのシステムに疑問を抱いてしまった青年・マル。
彼は自分の弟が、選出されたら二度と生きて帰れないとされる魔王討伐の≪勇者≫に選ばれてしまったことから、この非効率的なルールを改正しようと商人ギルドの本部に直談判すべく旅に出る。
ところが行く先々で目の当たりにしたのは、(どこか現代日本でも見かけるような)えぐい社会の構図と、それに翻弄される民の姿ばかり。
そして、長く困難な旅路の果てに、ついに到達した目的地では、衝撃的な真実を突きつけられて……!?
(引用:amazon なぜ銅の剣までしか売らないんですか?)
社会の構図について考えさせられる
物語自体は主人公・マルの目線で進められていきますが、旅の中で出会った人たちが様々な考えで商売をしているということが感じられました。
状況をうまく利用して利益を上げている者、利益を上げられるように社会を動かしている者、社会の構図に翻弄されて搾取されるものなど様々な人がいました。
社会の構図に翻弄されて搾取されている人々を見て、「こうはなりたくないな」と思いながらも、普段の生活などを振り返ってみると、搾取されている人たちと近い立場にいるということに気が付いてゾッとしました。
僕も搾取されないように、お金について学んだり、多角的に物事を見ることができる目線を養うことが必要であると感じました。
印象に残ったキャラクター
主人公が出会った人は、一筋縄ではいかない者たちばかりでしたが、特に僕が印象に残ったのは、金貸しのサンカクというキャラクターでした。
債務者から容赦なく借金を取り立て、国家間の戦争を煽って儲けようとするなど善人とはとても言えませんが、商売に関しては優秀かつ公明正大で、言ってることにも正しさがあるという、厳しい現実というものを体現したような感じがするキャラでした。
特に印象に残ったセリフが、借金の形に所有物を差し押さえられたことで恨み言を言っていた道具屋に対して言ったセリフで、
「叶いもしないことを望み、時間を浪費しているのが今のお前だ!そりゃ負けるさ!そんな人間が負けないはずがない!しかし俺は違う!俺はそんな無駄なことに時間を使ったりしない!お前が社会で文句を垂れている間、俺は学問に取り組んでいた!お前が他者を空論で批判する間、俺は商売を実践した!お前が酒場で飲んだくれている間、俺は何度も苦汁を舐めて飲み干した!その結果として、現在の俺とお前の状況がある!俺は今、社会に影響を与えられるほどの力を手に入れつつあるが、楽観に楽観を重ね怠惰を肯定しなにひとつ予見も備えもしてこなかったおまえは、ただただ社会に不平不満を述べることしかできないのだ!」 (p.266 より)
僕自身のことを言われているような気がして、このセリフは深く刺さりました。
不平不満を言うのではなく、その状況から抜け出すために行動していかなくてはならないと感じました。
おわりに
勧善懲悪な物語ではないですし、読み終わった後に爽快感があるわけではありませんでしたが、社会の様々な仕組みについて考えるキッカケになるのではないかと思います。
今まで漫然と当たり前に思っていたことについて疑問を持ち、常に考え、学んでいくことの大切さを知ることができました。
できることなら、社会人になる前に読んでおきたかったです。
それでは
おわり
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